白絹しらぎぬ)” の例文
拾って見れば、白絹しらぎぬのハンケチで、縁を紫で縫ったものだ。お光は何思ったかそっと頬をでて見て、懐にしまった。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
自分は聖影のおん前に何か祭壇が設けられて居るであらう、白絹しらぎぬや榊でいはひ清められて居るであらうと想つて居たが少しも其辺そのへんの用意が見え無かつたので
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
まだ陽に焼けぬ、白絹しらぎぬのようなクリーム色、あるいは早くも小麦色に焼けたもの、それらの皮膚は、弾々だんだんとした健康を含んで、しなやかに伸び、羚羊かもしかのように躍動していた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
K君の部屋は美くしい絨氎じゅうたんが敷いてあって、白絹しらぎぬ窓掛まどかけが下がっていて、立派な安楽椅子とロッキング・チェアが備えつけてある上に、小さな寝室が別に附属している。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふすまを隔てて、吉保は、白絹しらぎぬの小蒲団に枕をのせ、暢々のびのびと寝ころんでいた。そのからだに手をかけている老人は、鍼按摩はりあんまの大家で杉山流とみずから称えている杉山検校だった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こきものは淡墨うすずみとなり、うすきものは白絹しらぎぬとなり、きものはせつなの光となり、ゆるきものは雲の尾にまぎれる、巻々舒々かんかんじょじょ、あるいはがっし、あるいははなれ、呼吸いきがつまりそうな霧のしぶきとなり
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
白絹しらぎぬの袋紐ときつかがしらさしいづる見れば黄金づくりの太刀
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)