白山一華はくさんいちげ)” の例文
少し登ると傾斜の緩い高原状をなした段に出る、一面に岩銀杏いわいちょうを敷き詰めた緑の地に、白山一華はくさんいちげ珍車ちんぐるまの花が白い模様を織り出している。
北岳と朝日岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
谷から渦まきあが飛沫しぶきのような霧に、次第に包まれて来る、足許には白花石楠花しろはなしゃくなげや、白山一華はくさんいちげの白いのが、うす明るく砂の上に映っている。
槍ヶ岳第三回登山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
帰途を急ぐ必要上から充分に山上を遊ぶことが出来ないので、八時に絶巓を辞して野宿所へ降った、絶頂の植物は大略チングルマ、大桜草、白山一華はくさんいちげ、南京小桜などで、越後と岩代の駒ヶ岳
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
それからは楽な登りを続けていつか三角点を過ぎ、木立を抜け出ると偃松はいまつの散生した草原に、黄金色の信濃金梅しなのきんばいや純白な白山一華はくさんいちげ、夫等に交って大桜草
その薄ッペラの崖壁にも、信濃金梅しなのきんばいや、黒百合や、ミヤマオダマキや、白山一華はくさんいちげの花が、刺繍をされた浮紋うきもんのように、美しく咲いている、偃松はいまつなどに捉まって、やっと登ったが
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
珍車の実が露にぬれた長いほうけた毛を風にくしけずらしている。梅鉢草、白山一華はくさんいちげ、白馬千鳥なども皆花をつけていた。
大井川奥山の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
白山一華はくさんいちげの白と、信濃金梅しなのきんばいの黄とが、多く咲いている、チングルマの小さい白花、赤紫の女宝千鳥にょほうちどりなどで、小さい御花畑を作っている、霧の切れ目に、白河内岳が眼の前に、ぼんやり現われた
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
勾配の急峻な岩の襞には、小岩鏡こいわかがみ珍車ちんぐるま白山一華はくさんいちげなどの花が可憐な姿を見せているものの、岩が脆いので、足の運びが悪いと忽ち岩角が崩れて、少しも油断がならない。
雪の側はいわゆる御花畑で、塩釜しおがま白山一華はくさんいちげ小岩鏡こいわかがみなどが多い。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
周りは半里許り、水は透明で砂は白く、偃松の緑之に点じて、白砂青松、愛す可き景色である。池畔には白山小桜と白山一華はくさんいちげの大群落が、紅白相対して美観を呈している。
白馬岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それでも殆んど草原を埋めるばかりに群って、白山一華はくさんいちげや、チングルマなどと交って、岩穴や山稜リッジの破れ目に、咲いている、しわのあるところに白い花がある、ひだの折れたところに白い花がある
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
蒼黒い偃松はいまつの叢立を島のように取り巻いた鮮緑の草原を飾る白山小桜はくさんこざくら小岩鏡こいわかがみの紅と、珍車ちんぐるま白山一華はくさんいちげの白と、千島桔梗ちしまぎきょう虫取菫むしとりすみれの紫とは、群落をなした多くの花の中でも特に目立って美しい。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
例えば見渡す限り白い花の白山一華はくさんいちげに交って、紅い小岩鏡こいわかがみや、紫の虫取菫むしとりすみれなどが点在しているといった工合である。しかし少しも外のものが混らないで、純群落を作っていることもまた少なくない。
山の魅力 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)