疏水そすい)” の例文
キャラコさんが、あしをわけて疏水そすいのほうへおりてゆくと、いつものところに佐伯氏が待っていて、きょうは、たいへんおそかったと、いった。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
閑静しずかだから、こっちへ——といって、さも待設けてでもいたように、……疏水そすいですか、あの川が窓下をすぐに通る、離座敷へ案内をすると、蒲団ふとんを敷かせる。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
土佐郡とさぐん布師田ぬのしだの生れで、もと兼山の小姓であったが、兼山が藩のために各地に土木事業を興して、不毛の地を開墾したり疏水そすいを通じたりする時には、いつも其の傍にいたので
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
十年位前だったかに、大津から疏水そすい下りをしたことがあったが、その折に見た山科の青葉は心にみて忘れられなかったので、わたしはあの辺をぶらぶら歩いてみたいとおもった。
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
家がまた新しく変ったからであるが、この第二の学校のすぐ横には疏水そすいが流れていて、京都から登って来たり下ったりする舟が集ると、朱色の関門の扉が水を止めたり吐いたりした。
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
瑞見は遠く蝦夷えぞの方で採薬、薬園、病院、疏水そすい、養蚕等の施設を早く目論もくろんでいる時で、函館の新開地にこの横浜を思い比べ、牡丹屋の亭主を顧みてはいろいろと土地の様子をきいた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは昔七座の神に命ぜられて堤に穴を穿うがち、湖を疏水そすいした鼠で、猫を惧れて出なんだので七座の神が鼠を捕らねばのみを除きやろうと約して猫を控えさせ、さて鼠族一夜の働きで成功した。
筍を見たので思い出したが、今年はとうとう花の咲いたのも知らないうちに過してしまった。去年はたしか敏子と二人で、疏水そすいのふちを銀閣寺ぎんかくじから法然院ほうねんいんの方へ花見をして歩いたことがあった。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
明治になって、槇村京都府知事が疏水そすい工事を起して、琵琶湖の水を京に引いてきた。この工事は京都の市民によき水運を備え、よき水道を備えると共に、またよき身投げ場所を与えることであった。
身投げ救助業 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
疏水そすい伝いにインクラインへ着くと
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
次の日の夕方、いつものように疏水そすいのほうへ散歩に行くと、佐伯氏がそこの枯蘆かれあしの間にあおのけに寝ころんでいた。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
(なるほど! きのうに限って疏水そすいへやって来なかったのは、そういうわけだったんだわ)
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)