番場ばんば)” の例文
この人間ども、叩ッ斬ったる者は江州阪田のこおり番場ばんばの生れ忠太郎。(繰返していいつつ、書かせて貰い、次第にほろりとなり、落涙する)
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
愛知川えちがわ、小野、四十九院、摺針すりばり番場ばんばさめ柏原かしわばら。そして、伊吹のふもとまで、つつがなければもう近い。しかし、遠いここちでもあった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂本、本多、蒲生がまふ、柴田、脇ならびに同心等は、大手前おほてまへ番場ばんばで跡部に分れて、東町奉行所へ帰つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
伊増いますの明神とかいって、古来相当にうたわれないところではなかったけれど、番場ばんばさめ、柏原——不破の関屋は荒れ果てて、という王朝時代の優雅な駅路の数には
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
半次郎 三十過ぎた小粋こいきな男か。そんならゆうべ話をした兄弟分の番場ばんば哥児あにいだ。どれ、それを見せてくれ。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
大阪兵燹へいせん余焔よえんが城内の篝火かがりびと共にやみてらし、番場ばんばの原には避難した病人産婦の呻吟しんぎんを聞く二月十九日の夜、平野郷ひらのがうのとある森蔭もりかげからだを寄せ合つて寒さをしのいでゐる四人があつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
峠の上、番場ばんば宿しゅくは見えている。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忠太郎 あッおかみさんは憶えがあるんだ(思わず膝を進め)顔に出たそのおどろきが——ところは江州阪田の郡、醒が井から南へ一里、磨針峠すりはりとうげの山の宿場で番場ばんばという処がござんす。そこのあッしは。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)