田舎風いなかふう)” の例文
旧字:田舍風
そこは軍人交際づきあいの概して何事も派手に押し出してする方なるが、こなたはどこまでも昔風むしろ田舎風いなかふうの、よくいえば昔忘れぬたしなみなれど
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その時、勝重の母親が昼食のぜんをそこへ運んで来た。莢豌豆さやえんどうふき里芋さといもなぞの田舎風いなかふうな手料理が旧家のものらしいうつわに盛られて、半蔵らの前に並んだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬上の宮は少し遠くへ立っておいでになるのであったが、田舎風いなかふうな犬が集まって来てえ散らす。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そこは裏山につづいた田舎風いなかふうな庭の一隅いちぐうだ。寿平次は十間ばかりの矢場をそこに設け、粗末ながらに小屋を造りつけて、多忙な中にひまを見つけては弓術に余念もない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「うん、田舎風いなかふう御馳走ごちそうが来たぞ。や、こいつはうまからず」
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)