玉薬たまぐすり)” の例文
長政と共に退却した者も三千余人は候うべし。其の上兵糧、玉薬たまぐすりは、年来貯えて乏しからず、半年や一年は持ちこらえ申すべし
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「大阪城の屋根は、そぜとるけん、雨のったい」といい、大阪の薩摩屋敷にあった弓矢鉄砲、玉薬たまぐすりのはてまで、軍道具いくさどうぐを残らず船に積んで帰った。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
玉薬たまぐすりを用意して、城を固く堅められたら、あつかいになるのは知れたこと、その時は十分の利を得られましょうと云う。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
玉薬たまぐすりをこめ火縄を吹き、あなたにある弦之丞の姿をねらって、あわや短銃の引金を引こうとしている。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北は酒匂川さかわがわを総堀となし、南は三枚橋、湯本、箱根、石垣山まで取入れ総構えとなし、東は海を限り、西は箱根山の尾先へ続き、その広大なることは日本無双、城中には矢種やだね玉薬たまぐすりは山の如く貯え
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
寛永も中頃になって、ようやく御鉄砲玉薬たまぐすり奉行に任官し、高六百石、焼火やけひ間詰まづめになった。
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
猿奴にてがらをえさせたのは無念である、たゞこのうえは天守に火をかけて自害をするから、最後の様子をのちの世の手本に見ておくがよい、もっとも城には十余年来たくわえておいた玉薬たまぐすりがある
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)