猿公えてこう)” の例文
猟師の姿が見えなくなると、猿公えてこうは俳諧師の鳴雪翁のやうな(忘れてゐたが、鳴雪翁もえてきちと同じやうに四国生れである)
それから自身番へ引き摺って行くと、みんなもびっくりして町内総出で見物に来ましたよ。なぜわたしが猿公えてこうと見当をつけたかと云うんですか。
半七捕物帳:06 半鐘の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ところが大当たり。やっぱり、ゆうべの九ツ前後に一匹、あの一座の猿公えてこうが行くえ知れずになったんで大騒ぎしていたら、ひょっくりこっちの方角から帰ってきたっていいますよ」
猿公えてこうだんはんどこへ行かはったか知らんか」
高台寺 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
相客が余所行よそゆきの上品な言葉で風流話に無中になつてゐるうちに、良寛はひとり猿公えてこうのやうなきよとんとした顔をして、指先きで頻りと鼻糞をほじくつてゐた。
「おいら川越の山育ちなんだからな、猿公えてこうなんぞちっとも珍しくねえんだがな」
四国の猟師が猿をるには、枢仕掛くるゝじかけの一寸した戸棚を山の中にかつぎ込み、猿公えてこうがたんと集まつて来ると、猟師が自分で戸棚のなかへ潜り込み、ぴしやりとを閉める真似をしてみせる。
娘手踊りと猿公えてこうのおしばいが、たいそうもねえ評判だってことだから、まずべっぴんにお目にかかってひと堪能たんのうしてから、さるのほうに回るなんてえのも、悪い筋書きじゃねえと思うんですがね。
幾度いくたびかこれを繰返したのち猿公えてこうが好きさうな食物たべものをなかに入れておくのだ。
知つたかぶりの猿公えてこう
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)