猛火みやうくわ)” の例文
このままで行けば、結局、あの「ぢやぼ」につかまつて、体も魂も、「ほろぶることなき猛火みやうくわ」に、焼かれなければ、ならない。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大仏殿の二階の上には、千余人昇り上り、かたきの続くをのぼせじとはしをばひいてけり。猛火みやうくわまさし押懸おしかけたり。喚叫をめきさけぶ声、焦熱、大焦熱、無間むげん阿鼻あびほのほの底の罪人も、是には過じとぞ見えし。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
妾が身を生けんも殺さんも、唯だおん身のめいのまゝなり。夫人はひしと我身を抱けり。一道の猛火みやうくわは夫人の朱唇より出でゝ、我血に、我心に、我たましひに燃えひろごりたり。彼時速し、此時遲し。
母は『猛火みやうくわも沈みぬ』と。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)