父祖ふそ)” の例文
幸いにして、なかるべき筈の一命をたもち、父祖ふそ食禄しょくろくをうけてきた幕府へも、いささか報恩の労をつくし得たことは、法月家の不肖児ふしょうじ弦之丞としてできすぎた僥倖ぎょうこう
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父祖ふそ十代の御恩ごおんを集めて此君一人にかへし參らせばやと、風のあした、雪のゆふべ蛭卷ひるまきのつかのも忘るゝひまもなかりしが、思ひもかけぬ世の波風なみかぜに、身は嵯峨の奧に吹き寄せられて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
東に覇府はふありてより幾百年、唯東へ東へと代々よよみかど父祖ふその帝の念じ玉ひし東征の矢竹心やたけごころを心として、白羽二重にはかま五歳いつつ六歳むつつ御遊ぎよいうにも、侍女つかへをみなを馬にして、東下あづまくだりとらしつゝ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
思えば父たちのよろこびは、父祖ふそみな、町人といやしめられてきた長い長いからを破りうる、議会政治をむかえるため、ここに新憲法の成立発布を、どんなにどんなにか祝したく思ったのであろう。