むず)” の例文
つい台所用に女房が立ったあとへは、鋲の目が出て髯を揉むと、「高利貸あいすが居るぜ。」とか云って、貸本の素見ひやかしまでが遠ざかる。当り触り、世渡よわたりむずかしい。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女房 お国でたとえはむずかしい。……おお、五十三次と承ります、東海道を十度とたびずつ、三百度、往還ゆきかえりを繰返して、三千度いたしますほどでございましょう。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お仏壇は、蔦ちゃんが人手にゃ渡さねえ、と云うから、わっし引背負ひっしょって、一度内へけえったがね、何だって、お前さん、女人禁制で、蔦ちゃんに、さいふらせねえで、城を明渡すんだから、むずかしいや。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はあ、分らなくってね。私、方々で聞いてきまりが悪かったわ。探すのさえむずかしいんですもの。何だか、あの、小母さんたちは、ちょいとは、あの、逢って下さらなかろうと思って、私、心配ッたらなかってよ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)