濶大かつだい)” の例文
「人間的活動」の領域は濶大かつだいされ、それに参加する自由と機会とを万人が保障されている社会に、男も女も、適材を以て適処に就くのが宜しい。
「女らしさ」とは何か (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ケダシ士君子しくんし万巻ばんかんヲ読破スルモマタすべかラク廟堂ニ登リ山川さんせんまじわり海内かいだい名流ニ結ブベシ。然ル後気局ききょく見解自然ニ濶大かつだいス、良友ノ琢磨たくまハ自然ニ精進せいしんス。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
片岡中将としいえば、当時予備にこそおれ、驍名ぎょうめい天下に隠れなく、かしこきあたりの御覚おんおぼえもいとめでたく、度量濶大かつだいにして、誠に国家の干城と言いつべき将軍なり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
二個敵対の神祇は広大にひろがり、精微に入り、いかなる濶大かつだいなる物体のうえにおいても、いかなる緻密ちみつなる極微分子のうちにおいても、ともに存せざるところなく、ともに在らざるところなく
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
後影かげは確かにわが陸軍の将校士官のうちなるべし。一人は濶大かつだいに一人は細小なるが、打ち連れて物語などして行くさまなり。武男はその一人をどこか見覚えあるように思いぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
露国のごときは一はその土地一個の政治の版図としてあまりに濶大かつだいにして、またことにその人民と政府と相仇視あいきゅうしするがためなり。米国南北戦争のごときはその南北の利益相反したるがためなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かの濶大かつだいなる一人もせ来たりて武男に力を添えんとする時、短銃の音に驚かされしわが兵士ばらばらとせきたり、武男が手にあまるかの清人を直ちに倒して引っくくりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)