滅亡めつぼう)” の例文
けれどもその日本が今が今潰れるとか滅亡めつぼうの憂目にあうとかいう国柄でない以上は、そう国家国家と騒ぎ廻る必要はないはずです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
空襲の危険は刻々増加してきている筈だが、呑気者の私は何一つ準備をしない。書物などを疎開したって、国が滅亡めつぼうしたら何になると大きくかまえていた。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
持たない生物のために、人類が滅亡めつぼうさせられたりしてたまるものか。おまえの命も、これでもうおしまいだぞ
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これは武田家たけだけ滅亡めつぼうをまのあたりに見ているので、その亜流ありゅうをきらった人気にんきのあらわれともみられる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまの時代は自己じこ点張てんばりでは生きてゆけない、少年はたがいにひじをとり、かたをならべて、共同戦線に立たねばならぬのだ、ひとりの滅亡めつぼうは万人の滅亡だ、ひとりの損害そんがいは万人の損害だ
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
何故私が、小学校の地理では習ったけれども、訪れる用事があろうとも思えなかった此の南の島にやって来て、そして此処で滅亡めつぼうしなければならないのか。この事が私に合点がてんが行かなかったのだ。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
一書によると、王のおとしは十八さいであったと云われる。また、嘉吉かきつの乱にいったん滅亡めつぼうした赤松の家が再興されたのは、その時南朝の二王子をしいして、神璽を京へ取りもどした功績に報いたのであった。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
みやこが田舎をつぶす日は、都自身の滅亡めつぼうである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「——若君、おおどろき遊ばしますな、そのうわさともうすのは、おいえ滅亡めつぼうのみぎり、あえなく討死うちじにあそばしたと人も信じ、またわれわれどもまでが、うたがって見ませぬ四郎勝頼かつよりさま」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
防ぎようのない伝染病でんせんびょう細菌さいきんや、どんな防毒装置でも透過とうかする毒ガスや、そのほかいろいろの最新兵器も、みな死滅し分解され破壊されて、人類を滅亡めつぼうさせる役に立つこともなかったのだ。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)