湧返わきかえ)” の例文
牛魔王つのをもってこれを受止め、両人半山の中にあってさんざんに戦いければ、まことに山も崩れ海も湧返わきかえり、天地もこれがために反覆はんぷくするかと、すさまじかり。……
そこに、けむったい主人夫婦の帰った後の、解放されたびやかな心持が、もくもく湧返わきかえって来た。
九月一日 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
殺しても飽足りないような、暴悪な憎悪の念が、家を飛出して行く彼女の頭に湧返わきかえっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
急遽きゅうきょささやき合う声があちこちして、天井まで湧返わきかえはずを、かえって、瞬間、寂然しんとする。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大波湧返わきかえりて河の広さそのいくばくという限りを知らず。岸に上りて望み見るときかたわらに一つの石碑あり。上に流沙河りゅうさがの三字を篆字てんじにて彫付け、表に四行の小楷字かいじあり。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
停車場ステイションに着くと、湧返わきかえったその混雑さ。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我儘わがままな反抗心が心に湧返わきかえって来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)