渡船場とせんば)” の例文
もうトップリ日がくれた松本まつもと渡船場とせんばへきてあわただしく、そこの船小屋ふなごやの戸をたたいていたのは、加賀見忍剣かがみにんけんであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成善がその駕籠に乗って、戸田の渡しに掛かると、渡船場とせんばの役人が土下座をした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蟋蟀こほろぎ其處そこらあたり一ぱいきしきつて、あつまつたこゑそらにまでひゞかうとしてはしづみつゝ/\、それがゆつたりとおほきな波動はどうごと自然しぜん抑揚よくやうしつゝある。おつぎは到頭たうとう渡船場とせんばまでた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
渡船場とせんばらしい水際に、酒屋の旗をかかげた茶店が見える。そこで、一杯ひっかけているうちに、一と癖ありげな茶店のおやじが、じろと林冲を眼で撫でまわして。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ところでねえさん、矢走やばせ渡船場とせんばから四明ヶ岳の方にはいるには、この街道一筋だろうね」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふしぎなこと、……この渡船場とせんばに、一そうもそれが見あたりませぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)