渓川たにがは)” の例文
旧字:溪川
坂を下り尽すとまた渓川たにがはがあつた。川の縁には若樹のうるしが五六本立つてゐて、目も覚める程に熟しきつた色の葉の影が、黄金の牛でも沈んでゐるやうに水底みづそこに映つてゐた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
化粧室へ行つて顔を洗つて来て髪を結つて着物を着へても、二度をした上の客はまだ起きさうにない。私は書物を持つて廊下へ出た。汽車は渓川たにがはに添つて走つて居るのであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
山半やまのなかば老樹らうじゆえだをつらねなかばより上は岩石がんぜき畳々でふ/\として其形そのかたち竜躍りようをどり虎怒とらいかるがごとく奇々怪々きゝくわい/\いふべからず。ふもとの左右に渓川たにがはありがつしてたきをなす、絶景ぜつけいいふべからず。ひでりの時此滝壺たきつぼあまこひすればかならずしるしあり。
渓川たにがは石津瀬いはつせはしる水音も
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)