深甚しんじん)” の例文
この深甚しんじんな、異例の言葉に対して、何と挨拶すべきか、お松はぽっとしてしまいましたが、やがて、卓の上に泣き伏してしまいました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悲壮の美あり、崇高の観念あり。汚辱おじょくも淫慾も皆これ人類活力の一現象ならずして何ぞ。彼の尊ぶ所は深甚しんじんなる意気の旺盛おうせいのみ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
シューベルトはドイツのアクセントに深甚しんじんな注意を払い、ドイツ語の詩の美しさを生かして全く新しい歌曲を創始したのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
誠にこういう尊い霊場で故人殊に恩人友人の後を弔うということは、深甚しんじんにありがたく感じてよろこばしいやら悲しいやらの涙のあふれるを禁じ得なかったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
実際交通機関の発達は地球の大いさを縮め、地理的関係に深甚しんじんな変化を与えた。ある遠い所がある近い所よりも交通的には近くなったりして、言わば空間がねじれゆがんで来た。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これ然しながら不肖ふしょう私の語ではない、実にシカゴ畜産組合の肉食宣伝のパンフレット中に今朝拝見したものである。終に臨んで勇敢ゆうかんなるマットン博士に深甚しんじんなる敬意を寄せます。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黒馬博士の殊勲に対し、余鬼塚元帥は、深甚しんじんなる謝意しゃいと敬意とを捧ぐるものなり
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
犯人に警戒させないために深甚しんじんの注意を払ってあった。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
深甚しんじんなる研究も興味も持ってはいるが、土木建築となると、さほどに興味がないし、絵画彫刻となると、なお一層でした。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ワグナーの音楽の感銘は強大深甚しんじんで、その支持者はきわめて熱烈であった反面には、常にアンチワグネリスムスの萌芽ほうがはぐくまれ、時あって全ワグナーの功業、芸術を
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
わたしはかねがねあなたの研究論文にたいし、深甚しんじんなる敬意をはらっている者でしてな、海底超人の存在などは、けっきょく、あなたがいいあてたのですからね。よくおやりになりました。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それを気にして国辱と思っている人もあるようである。しかし「原大陸」の茫漠ぼうばくたる原野以外の地球の顔を見たことのないスラヴの民には「田ごとの月」の深甚しんじんな意義がわかろうはずはないのである。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
お花畑の花の色の透明にして深甚しんじんなのに酔わされた竜之助は、ここに来て、永遠と、無窮とを彩る、天地の色彩の美に打たれないわけにはゆきません。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
性行にも音楽にも、生ける時も、かんおおうても、崇拝者と勁敵けいてきとの多いワグナーではあったが、そのあゆみは巨人的でその音楽の後世への影響の深甚しんじんさは否むべくもない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
それが平次の深甚しんじんな同情の言葉でした。
それが平次の深甚しんじんな同情の言葉でした。