海驢あしか)” の例文
なかには、海豹、海驢あしか緑海豹グリーン・シールなど十匹ほどのものが、ひれで打ちあいウオーウオーとえながら、狭いなかをねかえすような壮観だ。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
人か、海驢あしかか、海豚いるかかと、月の光りで海のうえを透かしてみると、どうもそれは人の形であるらしい。
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ある日の事青山三丁目から電車に乗り込んで吊り皮に垂下ぶらさがつてゐると、直前すぐまへに腰を掛けてゐる海驢あしかのやうな顔をした海軍大尉が、急に挙手注目して席を譲つて呉れた。
私はその後になって、それが海驢あしかというものであり、全然害をしないものであることを知った。
まるで海驢あしかのようだと思った。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これは、さるところからまとめて手に入れまして……、さて、訓練にかかったところ、大変なやつが一匹いる。どうも見りゃ海豹あざらしではない。といって、膃肭獣おっとせいでもない、海驢あしかでもない。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
(縁に腰をかける。)手前も海驢あしかの生れ變りぢやああるめえ。なんで一日寢そべつてゐるのだ。長屋中が惣出そうでの井戸がへを知らねえか。寢ぼけたつらを早く洗つて、みんなと一緒に綱を引きに出て來い。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)