海老色えびいろ)” の例文
下手しもて海老色えびいろの幕の蔭から、金縁の眼鏡をかけてフロックコオトを着た、年の若い、赤ッつら気障きざ弁士べんしが舞台へ歩いて来て、見物一同へ馬鹿丁寧なお辞儀をした後
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
人家の屋根に日をさえぎられた往来おうらいには海老色えびいろり立てた電車が二、三ちょうも長く続いている。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
浪子はうつむきて、つえにしたる海老色えびいろ洋傘パラソルのさきもてしきりに草の根をほじりつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
十時も過ぎたと思うに蚕籠こかごはまだいくつも洗わない。おとよは思い出したように洗い始める。格好のよい肩に何かしらぬ海老色えびいろたすきをかけ、白地の手拭てぬぐいを日よけにかぶった、あごのあたりの美しさ。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)