浣腸かんちょう)” の例文
繃帯ほうたいを取替へるとか、背をさするとか、足を按摩あんまするとか、着物や蒲団の工合を善く直してやるとか、そのほか浣腸かんちょう沐浴もくよくは言ふまでもなく
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なるべく病人を楽にするという主意からまた浣腸かんちょうを試みるところであった。看護婦は昨夜ゆうべの疲れを休めるために別室で寝ていた。慣れない兄はってまごまごしていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「重態ですな。注射と滋養浣腸かんちょうをやってみましょう。明日の朝までに勝負がつくでしょうな」
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「まだ、君、毎日浣腸かんちょうしてますよ。そうしなけりゃ通じが無い……玩具おもちゃでも宛行あてがって置こうものなら、半日でも黙って寝ています。房ちゃん達から見ると、ずっとこの児は弱い」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
心の狂いをホントに治癒なおす。薬器械のたぐいというたら。只の一つも見当りませぬ。眠らぬ患者に麻酔まやくの注射じゃ。騒ぐ者には鎮静剤だよ。物を喰わねば栄養物の。注射、浣腸かんちょうぐらいのものです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
浣腸かんちょうをしたのは作さんが来てから二、三日あとの事であった。父は医者のおかげで大変楽になったといって喜んだ。少し自分の寿命に対する度胸ができたというふうに機嫌が直った。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
膿を拭ひ終れば、油薬を塗り、脱脂綿をおおひ、その上に油紙を掩ひ、またその上にただの綿を掩ひ、その上をまた清潔なる木綿の繃帯にて掩ひ、それにて事済むなり。この際浣腸かんちょうするを例とす。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
三十分ほど枕元まくらもとすわっていた医者は、浣腸かんちょうの結果を認めた上、また来るといって、帰って行った。帰りぎわに、もしもの事があったらいつでも呼んでくれるようにわざわざ断っていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
浣腸かんちょうすれども通ぜず。これも昨日の分を怠りしため秘結ひけつせしと見えたり。進退きわまりなさけなくなる。再び浣腸す。通じあり。痛けれどうれし。この二仕事にて一時間以上を費す。終る時三時。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「じゃもう一度浣腸かんちょうしましょう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)