流行ばやり)” の例文
いまも金沢ノ大夫に申したが、近ごろ武門は寝返り流行ばやりとか。遠慮はないぞ。鎌倉を出たい者はこのさい新田へ走るがいい。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「当時は横文字流行ばやりですから、私のような昔ものは戸迷いを致しますよ。薬一服買いに行ってもまごつきます。この夏も男爵邸の植物園で一大発見を致しました」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
遊んで居てもいけないからと云うので、今度商法をね……当節は兎角商法流行ばやりで、遠州の方から葉茶はぢゃを送ってくれると云うので、蠣殻町かきがらちょう空家あきやが有ったもんだから
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
維新以来ほとほと絶頂に達したかと思われるほど上下の人の心を酔わせるような西洋流行ばやりを考えると、心も柔らかく感じやすい年ごろの和助に洋学させることは、彼にとっては大きな冒険であった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ウム、完全完全の看板流行ばやりだわい」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鹿の子流行ばやりである。帯かたもとか、その鹿の子の端が、さっきからちらと見えていたが、母親に大声で笑われると、お次は
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……抜け目はないやネ、墓番のやつは、それでチイハ流行ばやりのこの頃、墓地の入場料をとってしこたま儲けているんだよ
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくさ! それもはや近ごろは耳新しいことでもない。……わけて世は裏切り流行ばやりだ。この鎌倉も落日とみて、裏切らぬやつは、近頃、ばかみたいなものだからの。はははは、そうじゃあるまいか、金沢の爺」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ずきん流行ばやりはロクでもない」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)