泥湖どろうみ)” の例文
それでも、泥湖どろうみの中の浮城うきしろは、寄手が近づけば、わっと反撥はんぱつする。死にもの狂いになって戦う。物を食っている兵よりも強いのだ。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心なしか、暮れかけている泥湖どろうみの水の光も、孤城の影も、何となくじゃくとして、雨のを身に迫る湿しめっぽい風が蕭々しょうしょうと吹き渡っていた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奉行の息子は、手ばなしできだした。また、雨が来る。ひくく降りた密雲からもう白い雨のしま泥湖どろうみへそそぎはじめていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その返書の文面から察しると、毛利の援軍が、見るかぎりな泥湖どろうみに当面して、いかに失望落胆したかがよくうかがわれる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泥湖どろうみを泳ぎ渡って、寒げにみゆる。かゆなど喰べさせて、途中、また捕まらぬよう、持宝院じほういん下まで、送ってやれ」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを、この石井山の南端から、大きな円形を描いたように、長さ二十八町二十間というどてを築いて囲み、川水を落して、大きな泥湖どろうみを作りあげているのである。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城内の町は分らないが、郊外百里の周囲は、まだ洪水のあとが生々なまなましく、田は泥湖どろうみと化し、道は泥没でいぼつし、百姓はみな木の皮を喰ったり、草の葉に露命をつないでいる状態である。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)