河野こうの)” の例文
「失礼ついでに、またお詫をします気で伺いますが、貴女もし静岡で、河野こうのさん、と云うのを御存じではございませんか。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
阿波を手におさめた長曾我部は、つづいて讃岐の三好隼人はやとをやぶり、さらに伊予に入って河野こうの党を討ち、ついに四国全島をしたがえたのである。
だんまり伝九 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
河野こうのよしさんが生まれた年だから、もうかれこれ十四五年の昔になる。自分もまだやっと十か十三ぐらいであったろう。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
糸織いとおりの羽織です、あれは河野こうのの叔母さんの形身かたみにもらったんで、同じ糸織でも今の糸織とは、たちが違います」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やはり同じ宿に泊っている河野こうのという男でしたが、これがこの物語の主人公ともいうべき人物なのですから、ここに少しく彼のことを説明して置かねばなりません。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この話の主人公河野こうのと云うのは宮地翁門下の一人であった。河野の名はひさし、通称は虎五郎、後に俊八しゅんぱちとも云った。道術を修めるようになってから至道しどうと云う号を用いていた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
みいちゃんは津藤つとうに縁故があるとかいう河野こうの某を檀那だんなに取っていたが、河野は遂にみいちゃんをめとって、優善が東京に著いた時には、今戸橋いまどばしほとりに芸者屋を出していた。屋号は同じ湊屋である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
過日このあいだ頼んだ、河野こうのさんとこへ、そののち廻ってくれないッて言うじゃないか、どうしたの?」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴方の大事なお師匠さま、真砂町まさごちょうの先生、奥様、お二方を第一に、御機嫌よう、お達者なよう。そして、可愛いお嬢さんが、して決して河野こうのなんかと御縁組なさいませんよう。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)