沈香ぢんかう)” の例文
祖母が沈香ぢんかうをもつてゐたのと、ゆびをやけどしたりすると、チチンカンプンと口で吹きながらいつたのとを、ごつちやにして、なんでも
お灸 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「それは旦那のでございます。白檀びやくだんとか沈香ぢんかうとかの入つた、長い/\カンカンの線香がお好きで、半ときいぶつて居ると御自慢にして居ました」
日本で云ふ伽羅の木が中国では沈香ぢんかうといふのだと知つたのも加野に教へられたからである。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
むかし西蕃さいばんから渡来した黄熟香くわうじゆくかうを、時のみかど聖武しやうむが蘭奢待の三字に寺の名を入れて、その儘東大寺の宝蔵に納められた稀代の沈香ぢんかうで、正倉院の目録によると、重量二貫五百目、長さ五尺二寸
見渡せば正面に唐錦からにしきしとねを敷ける上に、沈香ぢんかう脇息けふそくに身を持たせ、解脱同相げだつどうさう三衣さんえした天魔波旬てんまはじゆんの慾情を去りやらず、一門の榮華を三世のいのちとせる入道清盛、さても鷹揚おうやうに坐せる其の傍には
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
金箔銀箔瑠璃真珠水精すゐしやう以上合せて五宝、丁子ちやうじ沈香ぢんかう白膠はくきやう薫陸くんろく白檀びやくだん以上合せて五香、其他五薬五穀まで備へて大土祖神埴山彦神埴山媛神おほつちみおやのかみはにやまひこのかみはにやまひめのかみあらゆる鎮護の神〻を祭る地鎮の式もすみ、地曳土取故障なく
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「藥種屋か、唐物屋で訊くのが一番だと思つて、沈香ぢんかうか古渡りのギヤマンでも買ふやうな顏をして、日本橋の問屋筋を一軒殘らず歩きましたよ」
「香木のある穴だ。伽羅きやらだか、沈香ぢんかうだか知らないが、とにかく、名香をしまつてある穴だ。來い、八」
盜賊は入りませんかと——いや待て/\——大名屋敷に伽羅きやら沈香ぢんかうがあるのは不思議はないが、大名が町家の子供を五人もさらつて行く道理はない——それにお新の弟の信太郎は
「これだけありや、人參でも沈香ぢんかうでも買へるぜ親分」