沈着おちつい)” の例文
お勢母子ぼしの者の出向いたのち、文三はようやすこ沈着おちついて、徒然つくねんと机のほとり蹲踞うずくまッたまま腕をあごえりに埋めて懊悩おうのうたる物思いに沈んだ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
この人若いに似合にあわ沈着おちついたちゆえ気をしずめて、見詰めおりしが眼元めもと口元くちもと勿論もちろん、頭のくしから衣類までが同様ひとつゆえ、始めて怪物かいぶつなりと思い、叫喚あっと云って立上たちあが胖響ものおと
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
で、どのように沈着おちついた人でも、この紋也の姿を眼に入れたならば、動揺しないではいられないであろう。にもかかわらず部屋の中にいる、二十人余の人たちは、動じようとはしないのであった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)