汐路しおじ)” の例文
八重やえ汐路しおじという言葉は、歌や物語にこそしばしば用いられるが、それが如何いかなる力をもつかを考えてみた人は、名もなき海上の猛者もさばかりであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
水の中にある船体は、汐路しおじに乗って岸へ曳かれているらしいが、泥堆でいたいにでも乗りあげたら、一挙いっきょにバラバラになり、誰も彼れもみな海に投げだされてしまう。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
汐路しおじさまこそ口はばったいことをおっしゃりますな! 江戸錦はわたしのひいき相撲にござりますゆえ、めったなことを申しますると、晩におきゅうをすえてしんぜましょうぞ」
夜はほのぼのと、八重やえ汐路しおじに明けはなれてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八重やえ汐路しおじの一筋であったことは、支那シナ文籍ぶんせきの問題でないだけに心をめる者が少なく、こちらはまた南海は何処どこなぎさにも、あの美しい宝貝がころころところがっているもののように
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)