水槽みずぶね)” の例文
ふいにやってきたお客のへやの水差しやびんには間に合わせに水を入れなければならないし、水槽みずぶねにはもう水がなくなってしまっている。
中は五六十坪、筵張りの見世物にしては広い方ですが、その真ん中に、十坪あまりの真四角な水槽みずぶねえて、少し不透明な水が満々とたたえてあります。
「あの、水槽みずぶねに近いところにいた奴だろう」と、半七は茶を飲みながら訊いた。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と先生は流し場の水槽みずぶねのところへ出て、斑白はんぱくな髪をらしながら話した。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
風呂の中で歌祭文うたざいもんうたっているかかあたばね、上がり場で手拭てぬぐいをしぼっているちょん髷本多まげほんだ文身ほりものの背中を流させている丸額まるびたい大銀杏おおいちょう、さっきから顔ばかり洗っている由兵衛奴よしべえやっこ水槽みずぶねの前に腰をえて
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「親分。今日のは現にあっしがこの眼で見て来たんだから嘘も偽りもねえ。あの両国の海女あま水槽みずぶねへ飛込むと——」
馬琴は水槽みずぶねの前へ来て、心静かに上がり湯を使った。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「この水槽みずぶねの水を出してしまったら、何か嗅ぎ出せるかも知れないが——」