気忙きぜは)” の例文
旧字:氣忙
誰も彼もが気忙きぜはしさうに動いてゐるなかへ、ひよつくりと帰つて来た鶲は、持前の人の好さから人家の垣根近くに紛れ込んで
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
創立以来勤続三十年といふ漢文の老教師は、癖になつてゐる鉄縁の老眼鏡を気忙きぜはしく耳にはさんだりはづしたりしながら、相好さうがうくづした笑顔で愛弟子まなでしの成功を自慢した。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
「いゝから早く頂戴」彼女はテキパキと名刺を受取つたが、それを一瞥いちべつすると急に今までの気忙きぜはしさを忘れたかのやうに、「あ、さう」と云つて何気なく立ち上つた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
だのに、もう半年も前から、こんな気忙きぜはしい状態がつゞいてゐるやうに思はれた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
古時計はナポレオン三世のやうな気忙きぜはしさうな顔をして、露西亜人などには頓着とんぢやくなく息をはづませてゐる。紳士はいつになく露西亜が恋しくなつて来た。