気勢きせい)” の例文
旧字:氣勢
いんいんたる貝の音や鉦鼓しょうこが城外の諸方面に聞える。総攻撃開始の気勢きせいである。けれど織田勢はまだ城壁の下に兵影は見えなかった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山はどころどころに白い雲を靡かせて此方こちらから向うへと連りわたつてゐた。ふとかれはそのうしろに軽い足音を感じた。サラサラと半ば解けたやうな帯の気勢きせいを感じた。
浴室 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
かれら四人は、ふんぜんとれをはなれて甲板かんぱんの片すみに立ち、反抗はんこう気勢きせいを示そうとした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「そうだ」と、わたしの親方は乱暴らんぼう相手あいて気勢きせいにはちっともひるまないで答えた。
あけようと、あせっても、なにしろ前にくまをひかえて、片手をうしろにまわしての仕事しごとだからこまった。くまはいよいよきばをむきだし、いまにもとびかかろうという気勢きせいを見せている。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
杜の頸を巻いている彼女の腕がいきなりグッと締るかと思うと、最前から彼の耳朶に押しあてられていた熱い唇が横に移動して彼の頬の方から、はては彼の唇の方へ廻ってくる気勢きせいを示した。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
扉は外からしめられて、把手ハンドルの手のぐるりと廻る気勢きせいがしたが、廊下を伝つて階段の方へと下りて行く跫声が暫しの間きこえて、そしてあとはしんとなつた。Bはまた溜息をついた。
時子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
ところが、徳川家とくがわけの者たちは、それを聞くと、むしろ僥倖ぎょうこうのように気勢きせいをあげて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)