歩行ひろ)” の例文
外出好そとでずきの綾子夫人が一室ひとまにのみ垂込めて、「ぱっとしては気味が悪い、雨戸を開け。」といわるるばかり庭のおもさえ歩行ひろわせたまわず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうじゃろが、この婆もちと、きょうは歩行ひろい飽いた。したが、さすがに住吉のやしろ、見事な結構ではある。……ホホ、これが若宮八幡の秘木とかいう橘の樹かいの」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くツきりとした頸脚えりあしなが此方こなたせた後姿うしろすがたで、遣水やりみづのちよろ/\と燈影ひかげれてはしへりを、すら/\薄彩うすいろ刺繍ぬひとりの、數寄すきづくりの淺茅生あさぢふくさけつゝ歩行ひろふ、素足すあしつまはづれにちらめくのが。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)