武庫むこ)” の例文
武庫むこの大橋いかかったときに男が始めて、「どないします? やっぱり電車で帰ったようにせんと工合ぐあいわるい思いますが、……」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
綺麗な水のしやぶしやぶと云ふ音と人々の笑ひさゞめく声と河原の白い砂と川口の向うに見える武庫むこの連山が聯想されます。街の東の仕切になつて居るのは農人町川のうにんまちがはです。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
大阪近郊の平坦な地勢は、かぶと武庫むこ六甲ろくかふの山々を望むあたりまで延びて行つてゐる。耕地はよく耕されてゐて、ぶだう畠、甘藷の畠なぞを除いては、そこいらは一面の青田だ。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
武庫むこうら小舟をぶね粟島あはしま背向そがひつつともしき小舟をぶね 〔巻三・三五八〕 山部赤人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
表鳥居の参詣道さんけいみちをまッすぐにのぼって、岩船いわふね山の丘、高津の宮の社頭に立ってみると、浪華なにわの町のいらかの上に朝の空気が澄みきって、島の内から安治川辺の帆柱の林の向うに、武庫むこの山影も
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天つ日が四月の昼に見る夢か武庫むこ高原たかはらつつじ花咲く
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)