櫓韻ろいん)” の例文
四国屋の船から凱歌をあげた数艘すうそう艀舟はしけは、暗い大川を斜めにさかのぼって、安治川屋敷へと櫓韻ろいんをそろえた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒菰さかごもをかぶって蔵屋敷の用水桶のかげに、犬のように寝ている中に、土佐堀の櫓韻ろいん川面かわもからのぼる白い霧、まだ人通りはないが、うッすらと夜が明けかけてくる。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折から潮も満々と岸をひたしてきて、夜はちょうど五刻いつつ半ごろ、大川の闇は櫓韻ろいんにうごいてくる……。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼方あなた川面かわづらを水明りにかしてみると、さきにおかを離れた啓之助の舟、櫓韻ろいんかすかに、今しも三角洲の先からへさきを曲げて、春日出かすがでの岸へと真一文字にぎ急いで行く。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という櫓韻ろいんが大川の夜霞よがすみに遠くなって行った頃です——やがて入れちがいに、二人が去った納屋の中に、ぽっと明りの影が射して、男姿のお蝶が黙然と坐っていました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
櫓韻ろいんは、ぎい、ぎい、とやがて遠く河下かわしもへ消えて行った。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)