檸檬れもん)” の例文
腦髓は煑沸し盡し唯僅かに頭蓋の底部に檸檬れもん大ほどの小さなかすの塊が殘つてゐた。それはカリ/\になつてゐて觸れるとまだ温かつた。
無法な火葬 (旧字旧仮名) / 小泉八雲(著)
「あ、そうだそうだ」その時私はたもとの中の檸檬れもんを憶い出した。本の色彩をゴチャゴチャに積みあげて、一度この檸檬で試してみたら。「そうだ」
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
亞弗利加洲アフリカしうにアルゼリヤといふくにがある、凡そ世界中せかいぢゆう此國このくにひとほど怠惰者なまけものはないので、それといふのも畢竟ひつきやう熱帶地方ねつたいちはうのことゆえ檸檬れもんや、だい/\はなき亂れてそのならぬかほり四方よもちこめ
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
吾墓の色にす可き鼠色ねずみいろ、外套に欲しい冬の杉の色、十四五の少年を思わす落葉松の若緑わかみどり、春雨を十分に吸うたむらさきがかった土の黒、乙女のほおにおう桜色、枇杷バナナの暖かい黄、檸檬れもん月見草つきみそうの冷たい黄
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
海寺の磴段で、私はこつそり檸檬れもんを懐中にした。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そして軽く跳りあがる心を制しながら、その城壁の頂きに恐る恐る檸檬れもんを据えつけた。そしてそれは上出来だった。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
といふのはその店には珍らしい檸檬れもんが出てゐたのだ。檸檬など極くありふれてゐる。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
というのはその店には珍しい檸檬れもんが出ていたのだ。檸檬などごくありふれている。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)