檜皮葺ひわだぶき)” の例文
社は皆檜皮葺ひわだぶき、神官も大宮司と称して位も持っており、その下にも神官が数々居て、いずれも一家を構えて住んでいた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
すぐその御手洗のそばに、三抱みかかえほどなる大榎おおえのきの枝が茂って、檜皮葺ひわだぶきの屋根を、森々しんしんと暗いまで緑に包んだ、棟の鰹木かつおぎを見れば、まがうべくもない女神じょしんである。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鰹木かつおぎの立っている檜皮葺ひわだぶきの一宇が見える。八幡神社の古い拝殿だった。それと背中合せに南面して、かなり広い地域にわたって諸所に陣幕が張りめぐらされている。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
往来の砂をかすめるばかり、板葺いたぶき檜皮葺ひわだぶきの屋根の向こうに、むらがっているひでりぐもも、さっきから、凝然と、金銀銅鉄をかしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこで保胤は是非無く御答え申上げた。斉名が文は、月の冴えたる良き夜に、やや古りたる檜皮葺ひわだぶきの家の御簾みすところどころはずれたるうちに女のそうの琴弾きすましたるように聞ゆ、と申した。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)