機織場はたおりば)” の例文
僕が居ない時は機織場はたおりばで、僕が居る内は僕の読書室にしていた。手摺窓てすりまどの障子を明けて頭を出すと、椎の枝が青空をさえぎって北をおおうている。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「ああ、あるよ。この向うの精米所せいまいじょと、それからこっちの機織場はたおりばと。妙な事を聞くね」工夫の一人は不審そうに森君を見た。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
天照らす大神が清らかな機織場はたおりばにおいでになつて神樣の御衣服おめしものを織らせておいでになる時に、その機織場の屋根に穴をあけて斑駒まだらごまの皮をむいておとし入れたので
ますますに乗って、しまいには、女たちが女神のお召物めしものを織っている、機織場はたおりばの屋根を破って、そのあなから、ぶちのうまの皮をはいで、血まぶれにしたのを、どしんと投げこんだりなさいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
柳に受けて歩行あるかっしゃるで、機織場はたおりばねえやがとこへ、夜さり、畦道あぜみちを通う時の高声の唄のような、真似もならぬ大口利いて、はては増長この上なし、袖を引いて、手を廻して、背後うしろから抱きつきおる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)