ひのき)” の例文
千年も経たかと思われるような、二かかえから三抱えもある、杉やひのきかしの巨木で、あたりは隙なくよろわれていて、空など蒼い帯のようであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
くわを振りあげて、自分の老齢ろうれいと非力を嘆じたわけだが、ともかく掘った。腕はしびれるようにつかれ、地にして休息した。隣家の庭のひのきに火がついて、マッチをすったあとの軸木じくぎのように燃え果てる。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
かしわ、落葉松、ひのきなどの、斧の味を知らぬ大木が幾万本となく繁り合い光を遮っているからである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、その地図の真中へ、ポタリ、ポタリ、ポタリ、ポタリと、上の方から血がしたたって来た。驚いて天井を見上げると、ひのきの板を深紅に染めて生血が四角に染み出している。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
年を経た松やひのきや杉、梧桐や柏の喬木が、萩や満天星どうだんはぜなどの、灌木類とうちまじり、苔むした岩や空洞うろとなった腐木くちきが、それの間に点綴てんてつされ、そういうおそろしい光景を
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この藪地ジャングルは四方十里、それほどにも渡る広大なもので、沼あり河あり丘あり谷あり、それを蔽うて松、杉、かしわひのき、からまつ、くぬぎくり白楊しろやなぎなどの喬木類が、昼は日光、夜は月光をさえぎ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)