桜桃さくらんぼ)” の例文
旧字:櫻桃
六月になると学校の裏山には桜桃さくらんぼがなった。少年達は昼の休みにそれを取りに行って、みんな紫色の脣をして帰って来た。
プウルの傍で (新字新仮名) / 中島敦(著)
桃、梨、林檎、柿、杏、李、それに桜桃さくらんぼなどもその一つです、さうして色々の種類のこんな果物の木が、この善光寺平には一つ残らず植わつてゐるのです。
果物の木の在所 (新字旧仮名) / 津村信夫(著)
小苑が紅熟した桜桃さくらんぼをつまんで食べる時には、桜桃さくらんぼと唇との見わけがつかなかったというほどだから、どんなに美しい女だったかはほぼ想像することが出来る。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
四日目の朝、祖父の顔色が、苺色から桜桃さくらんぼ色にまで薄れ、子供のようなやすらかな寝息をたてはじめた。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「劉夫人」僕は、顔をはじめて曲げて彼女の桜桃さくらんぼのように上気した、まんまるな顔を一瞥いちべつした。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その一例をとれば、山形県地方の名産桜桃さくらんぼの樹枝が、ある種の雪のために全滅することがある。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
可愛かわいい桜桃さくらんぼのように弾力のある下唇をもっていて、すこし近視らしいがつぶらな眼には湿ったように光沢こうたくのある長い睫毛まつげが、美しい双曲線をなして、並んでいた——というと、なんだか
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)