桐畑きりばたけ)” の例文
雑木山のすそや、柿の樹の傍やうまやの横手や、藪の下や、桐畑きりばたけや片隅にぽつかり大きな百合ゆりあふひを咲かせた農家の庭の前などを通つて。
藤吉郎は、渋団扇しぶうちわを取りよせて、体のまわりを大きくあおいだ。もう秋風も立ち、桐畑きりばたけの桐の葉もおびただしく落ち出しているが、やぶ蚊はなかなか多いのだった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鼎造の崖邸は真佐子の生れる前の年、崖の上の桐畑きりばたけならして建てたのだからやっと十五六年にしかならない。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
赤坂の桐畑きりばたけのそばに小坂丹下という旗本がありました。千五百石の知行取りで、その先代はお目附を勤めたとか聞いています。一口に旗本と云っても、身分にはなか/\高下があります。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
桐畑きりばたけのわが新居へ来てみたのだ。すると、門を洗っている者があるし、荷物をかつぎ込んでいる者もある。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「新規に、おうまや方へ変って来られた、木下藤吉郎様じゃ。あの、桐畑きりばたけの空屋敷へ、近いうちお移りになるそうな。——ちょっと、御案内して、お前方の手空てすきの時、お掃除などしておいてお上げなさい」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)