桐油紙とうゆ)” の例文
「どれ」いや応なく取って見ると、桐油紙とうゆぐるみ、上に唐草銀五郎様、の名は裏に小さく「行きいの女より」としてあった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
再び丁寧にことわって、半七は桐油紙とうゆを着せてある駕籠の垂簾たれを少しまくりあげると、中には白い着物を着ている僧が乗っていた。英俊は泣き声をあげてその前にひざまずいた。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
耀蔵が手をたたくと、ほかの者が、彼女の見ている前で、外箱を造り、二重に入れて、桐油紙とうゆづつみに縄をかけた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、ただ心のうちで、浮世のドン底にむ人々の美しい心を伏し拝みながら、桐油紙とうゆぐるみの脇差を袖にかかえ、万吉と一緒にその路次からしのび忍びに歩きだした。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうか、じゃまってくれ、湿気しっけをくわねえように、今すっかりあいつを桐油紙とうゆでくるむから」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、遠旅とおたびにでも出るように、振分けやたた桐油紙とうゆまで肩に掛け、上がりもしないで
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
脚絆素わらじ、銀の脇差の一本落し、身軽に裾を端折はしょって、背中へは、桐油紙とうゆでくるんだ細長い物を、はすかいに背負い込んでいるが、長さ、工合ぐあいからみて、中身の品は確かに刀らしく見える。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
首の細いおそめ人形や久松人形も血泥ちどろによごれて、箱と一緒に踏みつぶされていたが、ふと、有村が隙を狙って拾い取ったのは、その人形とともに箱の中から飛びだしていた桐油紙とうゆで包んだ一じょう秘冊ひさつ
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)