柵外さくがい)” の例文
将校が私をとがめて「お前はなぜあちこち見廻って歩くか。」「私は総理殿下の対面所を求めて居ります」というと「今は対面の時でない、柵外さくがいに去れ」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
が、この大久保隊も、もう一隊の佐久間勢も、柵外さくがいに出ている目的は、敵の誘いにあって、実は、勝つことが最善ではない。だから逃げればいいのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は清浄と禁慾を主としたる従来の道徳及び宗教の柵外さくがいで、生活の充実と意志の向上を以て人生の真意義となせり。永劫えいごうの理想に向つて人生意気の赴く所、ここに偉大の感情あり。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また、からくもみずから柵外さくがいへ突いて出て、戦った兵もある。それらは柳生谷から大和月ヶ瀬方面へ向って駈け、数珠口坂じゅずぐちざかあたりに無数なかばねをすてて逃げおちた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は清浄と禁慾を主としたる従来の道徳及び宗教の柵外さくがいで、生活の充実と意志の向上を以て人生の真意義となせり。永劫えいごうの理想に向つて人生意気の赴く所、ここに偉大の感情あり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
すると兵士はなかなかかない。「なぜ出ぬか」といって、押出そうとする。私は黙って知らぬ振りをして居りますと、番兵らしい者が出て来て、「柵外さくがいに出ろ」といって厳命を下した。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
要するに、依然たる騎馬精鋭をもって、まず山県やまがた三郎兵衛以下、甘利あまり、跡部、小笠原の諸隊は、猛然と、柵外さくがいの佐久間信盛と大久保忠世の手勢へ、襲いかかって来たのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間者牢かんじゃろう柵外さくがいに、山番が焼飯のかてをおいてゆくのを取りに出る時と、渓流けいりゅうへ口をそそぎにゆく時のほかは、洞窟どうくつの奥にのめも見ず、精と根を秘帖ひじょうにそそいで、ここに百四十日あまり
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)