とぼそ)” の例文
旧字:
さすがに、彼女がここの雑仕女から玉のとぼそへ入って、六条の義朝に愛されていた盛りには、ねたみそねみの陰口に暮していた院の朋輩ほうばいたちも
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とぼそがまるで、おしちぎられでもするかと思うほど、音に力のこもって来た時、ちょうど、鶏が鳴いた。其きりぴったり、戸にあたる者もなくなった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
とぼそ落ちては月常住じやうぢゆうともしびかかぐ——と、云ふところを書くところが、書いてありました。
一人の無名作家 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やがておづしの前に近よつた。太い格子戸の戸が左右から引かれて、太鼓錠がとぼその真中に下つて居る。彼は手さぐりに戸前とまへの処を撫でて見た。冷たい鉄の錠がひやりと彼の指先にさはつた。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
戸をさしてとぼその内や羽子はねの音 毛紈もうがん
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
とぼそは砂をんできしった。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)