板片いたぎれ)” の例文
しかも私はそのとき、くちに触れるほど近く頭上におっかぶさった二枚の板片いたぎれの間から、ぽっちりと静かに澄みきった蒼穹あおぞらを眺めていました。
右の手には、そこらから拾って来たらしい細長い板片いたぎれを持って、それを左右に打ちふりながら、橋のほうから来る電車に合図のような事をしていた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうしてい加減、暖たまったところで立ち上るとすぐに、私を流し場の板片いたぎれの上に引っぱり出して、前後左右から冷めたい石鹸シャボンとスポンジを押し付けながら
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
手近に金のない時は、板片いたぎれの端にもちをつけて、銭函ぜにばこの中から銀貨を釣り出した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
もちろん帆布ほぎれもない。板片いたぎれもない。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
池の波紋が遂にみぎわに達すると、そこに浮いている木の葉や板片いたぎれが動揺し少時しばらくしてまたもとの静平に復する。
無線電信の近状 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その板戸の継ぎ嵌めだらけの板片いたぎれを一つ一つに検めていた草川巡査は
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これからだんだん暑くなりますから、田圃たんぼの小流れのようなところで、板片いたぎれなどで水をき止めて早吸の瀬戸や鳴門の模様をこしらえてみるのも面白かろうと思います。
瀬戸内海の潮と潮流 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)