望外ぼうがい)” の例文
身心流暢りゅうちょうして苦学もまた楽しく、したがって教えしたがって学び、学業の上達すること、世人の望外ぼうがいに出ず。その得、三なり。
しかも、その家へ呼ばれて御馳走ごちそうになったり、二三日間朝から晩まで懇切に連れて歩いて貰ったり、昔日せきじつ紛議ふんぎを忘れて、旧歓きゅうかんを暖める事ができたのは望外ぼうがい仕合しあわせである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生すみやか肯諾こうだくせられ、わずか一日にして左のごとくの高序こうじょたまわりたるは、実に予の望外ぼうがいなり。
就職難が厳しいと青年は藁へでも取っつかまる。それに二三年後の海外視察が気に入った。一度は西洋を見たいと思っていたが、斯う近い将来に機会が潜んでいようとは望外ぼうがいの仕合せだった。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それならそれで望外ぼうがいなことだと思う。
宮本武蔵:01 序、はしがき (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これはどうも福徳ふくとくの三年目。望外ぼうがいのお饗応もてなしで、じつに恐縮。どうせ御主人がお帰りになるのは四ツ刻とうけたまわったから、それまでの座つなぎ、思召しに甘えて、ひとつゆっくり頂戴するといたしましょう、なにとぞよろしく」
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
文明の進歩駸々しんしんとして我党の空想を実にしたるのみか、かえってその空想者の思い到らざる所にまで達して、遂に明治の新日本を出現したるこそ不思議の変化なれ、望外ぼうがい仕合しあわせなれ。