書卸かきおろ)” の例文
とりわけ脚本が書卸かきおろものの場合になると、あらかじめ役どころの見当がつかないだけに、俳優やくしやは物言ひばかり多くて、なかなか役を引請ひきうけようと言はない。
二番目は菊五郎の「紙治かみじ」これは丸本まるほんの「紙治」を舞台に演ずるやう河竹新七かわたけしんしちのその時あらた書卸かきおろせしものにて一幕目ひとまくめ小春こはるかみすきのにて伊十郎いじゅうろう一中節いっちゅうぶしの小春を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
今なら舞台監督兼作者となったのが水蔭で、一番目の『つも怨切子燈籠うらみきりこどうろう』という半世話物の仇討劇あだうちげきも二番目の何とか太平記といった大塔宮だいとうのみや吉野落よしのおちを材とした一幕物も皆水蔭の書卸かきおろしであった。