あば)” の例文
君は、夷岐戸島の秘密を、それからそれへとあばいていったね。しかし、まだ一つだけ、君の眼に止まらなかった井戸があるのだよ。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ばア様といふ綽名は又如何いかにもそのこせ/\した性情をよく象徴してゐて、実に小言好きの野卑な男で、私の旧悪を掘り出して人毎にあばくことを好んだ。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
一万余人の百姓や人夫を動員し、数千の兵を督して、前日から、帝室の宗廟そうびょうの丘に向い、代々の帝王の墳墓から、后妃や諸大臣の塚までを、一つ残さず掘りあばいたのだ。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「諜報事件に面白いのがあるがね、しかし僕がどんな風にしてそれをあばいたかなんてことを公表しようものなら、これから捕えようとしている大切な魚がみな逃げてしまうよ」
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
枯野にほたるを放ったようなもので風流かも知れないが、細君の御意ぎょいに入らんのは勿論もちろんの事である。髪さえ長くしておけば露見しないですむところを、好んで自己の非をあばくにも当らぬ訳だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし僕は、指一本動かさせただけで、また詩文の字句一つで発掘を行い、それから、詩句で虚妄うそを作らせまでして、犯人の心像をあばき出したのだ
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そのからくりも、化けの皮も、やがて近いうちに、江漢があばいてみせる。——とにかくこの婦人の一命は、何ものより大切なのだ。どこか、無事な所へ移して、おまえ達で保護をしてくれい。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と主人も負けぬ気になって迷亭の旧悪をあばく。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまり、ハートの史本にはないけれども、プロシア王フレデリック二世の伝記者ダヴァは、軽騎兵ブラーエを、プロック生れの波蘭猶太人ポウリッシュ・ジュウだとあばいている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)