暗指あんじ)” の例文
中村、藤沢両君の話にると、十七日に、主治医のばん鎌吉さんが、赤彦君の黄疸わうだんの一時的のものでないことの暗指あんじを与へたさうである。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
実際生活を暗指あんじしつつ恋愛情緒れんあいじょうしょを具体的にいって、少しもみだらな感をともなわず、ねたましい感をも伴わないのは、全体が邪気じゃきなくこころよいものだからであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そうして味えば、この歌には皇子一流の写生法と感傷とがあって、しんみりとした人生観相を暗指あんじしているのを感じ、選ぶなら選ばねばならぬものに属している。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
水面は全く水の動揺を収めてこの事件をすこしも暗指あんじしてゐる様な気色けはひがない。ややしばらくすると、童はつひにむなしく水面に浮上つて来て、しきりに手掌てのひらで顔をでた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
霍公鳥ほととぎすの来ることを希望しているのだが、既に出た皇子の御歌の如く、おおどかの中におごそかなところがあり、感傷にいんせずになお感傷を暗指あんじしている点は独特の御風格というべきである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ところが其の沈黙の一人が何かのはずみに、『私どもは天皇のために命を捨てることなどは何でもありません』と云った。これが記者には何かを暗指あんじしている異様な響で聞こえたのであった。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)