暑気あつさ)” の例文
暑気あつさは日一日ときびしくなつて来た。殊にも今年は雨が少なくて、田といふ田には水が充分でない。日中は家のうちでさへ九十度に上る。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
行李こうりそこそこかの地を旅立ち、一昨日おとといこの地に着きましたが、暑気あつさあたりて昨日一日、旅店に病みて枕もあがらず。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
熱し熱しと人もいい我もかこつ。鴻巣こうのす上尾あげおあたりは、暑気あつさめるあまりの夢心地に過ぎて、熊谷という駅夫の声に驚き下りぬ。ここは荒川近きにぎわえる町なり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
三「御免なさいまし……えゝ追々気候も相当致しまして自然暑気あつさが増します事で、かるが故に御壮健の処はしかと承知致しまかりあれども、存外寸間すんかんを得ず自然御無沙汰に相成りました」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二十四日の午前ひるまえ、日が照つて再び暑気あつさが増した。
大野人 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
みずあたりか、暑気あつさあたりだろ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お定が十五(?)の年、も少許すこしで盆が来るといふ暑気あつさ盛りの、踊に着る浴衣やら何やらの心構へで、娘共にとつては一時も気の落着く暇がない頃であつた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)