時間ひま)” の例文
ゲエテだつたか、「今日は時間ひまが無いから、仕方なく長い手紙をしたゝめる」と言つたが、これは演説にもまたよく当てはまる。
三時少し過ぎなれば、しまい汽車にはまだ時間ひまあり。一度ひとたび病院へ取って返して、病人本間の様子を見舞い、身支度して出直さんと本郷に帰りけるに、早警官等は引取りつ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕なんかも、金と時間ひまさへあつたら、早速何處かへ行くね。成るべく人のゐない處へ行くね。だが、自然といふものには、批評が無いと同時に餘り無關心過ぎるところが有る。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
上役の者までが、意外そうな——少くもただ安心したというだけではない——表情を浮べて、「偉い時間ひま潰しをやったなあ」と云いながら、帳簿を伏せるのを見た浩は、思わず愕然とした。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
人間は誰しも女を可愛かあいがるとか髯を剃るとかの時間ひまがなければならぬもので、そしてそんな時間ひまが無い程なら人生はまあうでもい位のものだ。
ある日小山内氏が原稿書きにも飽いて、ペリカンのやうにあんぐり欠伸あくびをして時間ひまを潰してゐた事があつた。すると誰か知ら玄関に訪ねて来た者があつた。
交通機関の電車にしてからが、(その頃京都にはまだ市の電車といふものは無かつた)横目で見て通ればよいので、あれに乗つては時間ひまが潰れて仕方が無いと言つてゐた。
将棊のやうに相手が要つたり、時間ひまがかゝつたりするものではとてもいけない。この意味からナポレオンはひまがあると、小娘のやうに絹糸を取り出して、指にからんで綾取あやとりをしたものだ。