昨夜来さくやらい)” の例文
その翌日のひるさがり、警視庁の大江山おおえやま捜査課長は、昨夜来さくやらいめかけている新聞記者団にどうしても一度会ってやらねばならないことになった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私がお嬢さんの顔を見たのは、昨夜来さくやらいこの時が始めてでした。お嬢さんは泣いていました。奥さんも眼を赤くしていました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨夜来さくやらいしきりにり来る雨は朝に至りて未だれず、はるかに利根山奥をのぞむに雲烟うんえん濛々もう/\前途漠焉ばくえんたり、藤原村民の言の如く山霊さんれい果して一行の探検たんけんを拒むかとおもはしむ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
それを聞くと紋三は、三千子が五日間もうちの中に隠れていたとすれば彼女はとっくに死骸になっているに相違ないと思った。彼は昨夜来さくやらいの悪夢の様な感じがまだ抜け切らないのだ。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
汽車は、雪のため、昨夜来さくやらい、やや速力がにぶってきたが、とうとう午前十時ごろには、雪の中に停ってしまった。そして、向うから除雪車が来るのを待つこととなった。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
死屍ししはずかしめず」ということわざを忘れたわけではなかったが、非戦闘員である彼等市民の上に加えられた昨夜来さくやらいの、米国空軍の暴虐振りに対して、どうにも我慢ができなかったのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)