春日町かすがちょう)” の例文
春日町かすがちょうでまた吹雪の中に取り残された。長い砲兵工廠の塀の一角にそふておよそ二十分も立つてゐる間には、体のしんそこから冷えてしまつた。
乞食の名誉 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
春日町かすがちょう」という綴方を投書したところが、こんどは投書欄では無しに、雑誌の一ばんはじめのペエジに、大きな活字で掲載せられて居りました。
千代女 (新字新仮名) / 太宰治(著)
誠に正直一途いちずの人で、或る日、本郷春日町かすがちょう停留場の近所で金を拾い直ぐさま派出所へ届け、落とし主も解りその内より何分いくらか礼金を出した所、本人は何といっても請け取らないので
十時ごろ帰って来て、飯田橋いいだばしで一度電車を乗り換え、二度目に水道橋で大塚行の電車へ乗って、後の上り口の処へ立っていると、春日町かすがちょうの方から来た電車と壱岐坂いきざか下の手前で擦れ違った。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
松島の従兄いとことついだとき、容色もよくなかったところから、相当の分け前を父からもらい、良人おっとが死んでから、株券や家作や何かのその遺産と合流し、一人娘と春日町かすがちょうあたりに、花を生けたり
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それから四、五日経ったある日の夕方、私は、市内に用たしに出かけたが帰りがけ、春日町かすがちょうの電車乗換場で雨に降られた。そこで私は、その近所に下宿していた瀬川の宿へと久し振りに飛び込んだ。
その中を笹村は春日町かすがちょうの方へ降りて行った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)