斜向すじむか)” の例文
しかし旅宿やどはすぐ斜向すじむかいなので何の苦もない。開いている戸の間からはいって、寝臭い暗闇を撫でながら二階へ上がった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この西川屋一家も以前もとは大門通りに広い間口を持っていた。蕎麦屋の利久の斜向すじむかいに——現今いまでも大きな煙草タバコ問屋があるが、その以前は、呉服用達ようたしの西川屋がいたところである。
今度出来た、谷川に架けた新石橋は、ちょうど地蔵の斜向すじむかい。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(武蔵はゆうべおそくまで、旅籠の前の刀屋へ行って話しこんでいたらしいが、今朝は旅籠を引払って斜向すじむかいの刀研かたなとぎ厨子野耕介ずしのこうすけの家の中二階へ移った)
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると次の日、池之坊の斜向すじむかいにある温泉宿ゆやどへ、三人づれの旅商人が泊った。表二階の障子をたてた部屋の内から、一人はかならず外を見張っていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
米屋五兵衛というその男は、もうここの小間物屋より半年も前に、吉良家の裏門からすこし二つ目寄りの斜向すじむかいに店を持っていた同志の前原伊助であった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ふとそんなことを思いながら——宿の斜向すじむかいの「おんたましい研所とぎどころ」の板が出ている店をのぞいた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)